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世界でここだけ!ふく調理のプロが伝授 下関で高級魚「トラフグ」料理体験にチャレンジ

日本一の取扱量を誇る「下関のフグ」は味も格別

本州の最西端に位置する下関市。3方向を海に囲まれ、海の幸の宝庫として知られています。中でも全国トップの取扱量を誇っているのがフグです。高級魚として大人気のフグを、なんと自分で料理して食べられるプログラムがあると聞き、行ってみました。

体験する前に、まずは下関とフグの関係をひも解いておきましょう。下関では昔から「フグ」を「フク」と呼び、「不遇」(フグウ)ではなく「幸福」(コウフク)につながると考えてきました。しかし安土桃山時代、豊臣秀吉が朝鮮出兵の際、フグを食べて中毒死する兵士が相次いだため「フグ禁止令」を発令。明治時代まで、藩によっては厳しく取り締まっていました。

ときは流れて1888年。総理大臣の伊藤博文公が下関の旅館「春帆楼」でたまたまフグを口にして、そのおいしさに感動し禁止令を解禁。「春帆楼」はフグ料理公許第1号となり、下関ではフグ食文化が大いに花開き、やがて「フグといえば下関」として知られるように。フグ調理師や料理人は長年にわたり、フグをいかにおいしく食べるか研究してきたため、「下関で調理されたフグは日本一」と絶賛されています。

フグは怒るとプーっと膨らむ

下関市彦島の南風泊(はえどまり)市場は、全国で唯一フグを専門に取り扱う市場で、全国から多くのフグが集まってきます。その取扱量は日本一。朝3時すぎから、袋の中でセリ人と仲買人が指を握って値段を決める「袋セリ」を行い、日本各地に出荷されていきます。

一流のプロに教えてもらい、トラフグを料理して食べる

数あるフグの中でも“王様”といわれるのが最高級品のトラフグです。関東や関西に比べると下関では割安ですが、それでも一般の人はなかなか手が出ません…。そんなトラフグを楽しくお得に味わえる特別な場所があります。JR下関駅から車で15分ほどの「ふく楽舎」です。

「ふく楽舎」ではかわいいフグのオブジェがお出迎え。調理体験の会場となっている2階から海を見渡せる

「下関はフグの取扱量が日本一ですが、高級魚なので一般の人にとっては遠い存在でした。もっと気軽にフグを味わってほしいという思いから、この施設を作ったんです」と話すのは、株式会社天白ひらこしの平尾泰範さん。平尾さんの祖父が1935年に創業したフグ専門の仲卸「平越」を母体として1997年にオープンしたこちらでは、「ふくふくゼミナール」と題したフグの料理体験ができます。

株式会社平越商店・株式会社天白ひらこしの代表取締役を務める平尾さん

フグには猛毒があり、有毒部位やヒレの処理作業をするためには「ふぐ処理師免許」が必要です。ふぐ楽舎では、食べられる身だけの状態になった「みがき」を料理します。今回チャレンジするのは「天白コース」(1人7,000円、2019年10月1日以降は7,130円)
)。トラフグのみがき1尾を贅沢に使い、フグのタタキと皮刺し、フグちりを作ります。
指導してくれるのは料理長の内田祐介さん。フグ調理歴27年のベテランで、宮家に献上される天然トラフグの調理を担当するほどスゴイ人なんです。とはいえ、とても気さくな人柄で、説明はわかりやすく、楽しい雰囲気で体験できます。

料理長の内田さん。小学生からシニア、外国人まで、相手に合わせた軽快なトークが好評

内田さんの説明を聞き実演を見ながら、料理を進めます。まずは出刃包丁で、フグの頭と尻尾を切り落とします。次に身を3枚におろすと聞いて身構えると「包丁を骨に沿わせて切ればいいんですよ。フグは小骨がないから、3枚おろしは世界一カンタン」と内田さん。確かにサッと切れました。

トラフグの身を3枚におろす

今回フグはサッと炙ってタタキにします。「炙ることで素人でも刺身を引きやすくなり、うまみが増し、香ばしさもたまらないですよ」と聞き、テンションが上がります。フグの身に串を刺してお湯をかけたら、ガスコンロの焼き網に押し付けて、全体に焦げ目をつけます。

炙る前にサッと熱湯をかける
フグの身を焼き網に押し付けて、焼き目をつける

続いて、皮を湯がきます。「フグの皮は2重になっていて、外側に皮、内側には筋肉があります。余分なゼラチンをしっかりもみ洗いしてください」。背と腹、それぞれ内外で合計4枚の皮は見た目や感触が微妙に違います。

背と腹の皮は二重になっている
フグは怒ると腹が膨らむので、腹の皮の内側は筋肉でコラーゲンがたっぷり

さて、次はいよいよタタキを薄く引いていきます。まずは内田さんが実演。見事な手さばきで、次々と美しい刺身を並べていきます。「ゆっくり切れば薄くできます。ただ、同じ厚さと幅で均等にするのが難しいんですよ」と内田さん。いとも簡単に引いているように見えましたが、実際にやってみると身が意外にかたく、均等にするのは至難の業。薄くなりすぎて一部に穴が空いたり、面積が小さくなったり。包丁を入れる角度、引くときの力の抜き具合、指の置き方…すべてを意識しようとすると、動きがぎこちなくなります。でも、内田さんにアドバイスしてもらいながらやっているうちに、何となくコツがつかめてきました。最後に身と皮を盛り付けて、完成です。
内田さんの皿と比べると明らかな差がありますが、「お世辞抜きに上手ですよ。誰でもすぐ上手にできたら、僕らの仕事がなくなりますから(笑)」とフォローしてもらい、達成感を味わうことができました。

内田さんの鮮やかな包丁さばきについつい見とれてしまう
薄く引くときは右手の人差し指でバランスを取るのがポイント
体験のときは紙エプロンをつけて料理する

料理して残った片身とオリジナルポン酢、ヒレ酒用のトラフグ焼きヒレ、小冊子はお土産として持ち帰ります。さらに、参加者全員に修了証書が授与されました。

修了証書をもらえるのもうれしい

それでは、自分で料理したタタキと皮刺し、フグちりをいただきます。タタキは、フグの淡白な味わいに炙りならではの香ばしさが加わって、噛むほどにうまみが広がっていきました。自分で作ったからこそ、感動もひとしおです。
フグちりは身が柔らかく、プリプリとした食感。アラから出た上品なダシで、野菜や豆腐も極上の味わいに。締めはうまみたっぷりの雑炊で、満腹でもお代わりしたくなるほどのおいしさでした。

天白コースは1人前でもボリュームたっぷり。心ゆくまでフグを堪能できる
フグのタタキは皿が透けて見えるほど薄く引き、数枚を一緒に食べる
フグちりはオリジナルのポン酢でいただく

お店で食べると1万5,000円は下らないというフグのフルコースを、自分で楽しく調理してお土産までついて約7千円というのは超破格。修学旅行をはじめ、国内外から年間500~700人がやってくるほど人気の企画なのです。

ふく楽舎までは行けないけど家で料理してみたいという人は、唐戸市場へ。みがきがお手頃価格で手に入ります。

天白ひらこし
住所:山口県下関市彦島西山町5-2-1
TEL:083-267-4998
休み:年始、月1・2回
ウェブサイト:http://www.fukurakusya.jp/

「ふくふくゼミナール」予約制
時間:11:00~13:00
人数:8~80名
休み:7/10~9/20、12月
※2人で1尾を調理する「義経コース」(1人4,053円)もあります
※義経コースは、お土産と修了証書はございません。
※『みがき』販売も行っています。

唐戸市場
住所:山口県下関市唐戸町5-50
TEL:083-231-0001

Writer
佐々木恵美
Photographer
窪田司
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