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飲んだあとの〆はラーメンじゃない!? 札幌「シメパフェ」文化の謎に迫る

お酒を楽しんだあとの〆の定番といえばラーメン。味噌ラーメンが有名な札幌ならなおさら…と思いきや、実は近年の札幌では「シメパフェ」なるものが大ブームを巻き起こしているんです。

飲んだあとにスイーツ? どうして札幌発祥なの? …数々の疑問を解消すべくさっそく北海道に飛び、「札幌パフェ推進委員会」の方に真相をお聞きしてきました。

札幌に昔から根づいていた「夜に甘いもの」文化

案内されたのは、札幌の中心部にあるアーケード商店街「狸小路」一丁目の裏路地。粋な小料理屋のようなお店の前には、なんだか似つかわしくないソフトクリームのディスプレイが…。

『パフェ、珈琲、酒、佐藤』外観
『パフェ、珈琲、酒、佐藤』内観

実はここ、札幌パフェ推進委員会の小林仁志さんが運営するお店『パフェ、珈琲、酒、佐藤』。洗練された和テイストの店内では店名のとおり、パフェをはじめとするスイーツ、コーヒー、アルコール、軽食やおつまみをいただけます。

札幌パフェ推進員会 小林仁志さん

小林さんは、札幌のデザインプロダクション・アリカデザインの代表。地元企業を中心にブランディングやプロモーションを手がけています。委員会を立ち上げたきっかけは、あるクライアントからの「お店の名物をPRしてほしい」というオファーだったそう。

「それがたまたまパフェだったんです。札幌には、夜に甘いものを食べる文化が昔からあり、こだわりのパフェを出す店も数多くありました。そこで、この名もない文化を札幌独自の地域文化として発信することを思いつき、きっかけをくれたクライアントとともに2014年に『札幌パフェ推進委員会』を発足しました」

小林さんが教えてくれたデータによれば、札幌市の1世帯あたりの酒類支出金額は全国4位、ケーキ支出金額は全国6位といずれも上位(総務省統計局 家計調査 2016〜2108年より)。室内が暖かいため冬でもアイスクリームを食べるなど、札幌はもともとお酒と甘いものを好む地域なのだとか。

「シメパフェが札幌独自の文化であることを浸透させたかったので、最初はあえて道内の情報番組やタウン誌のみに発信。1年後に道外向けにリリースすると、テレビ・雑誌・新聞から予想以上の取材オファーをいただきました。インスタブームもタイミングがよかったですね。地元の人の投稿が国内外にまでどんどん広まっていき、それに合わせて海外向けメディアで発信したり英語サイトをつくったりしました」

「札幌の食文化」から「日本の食文化」へ

『パフェ、珈琲、酒、佐藤』は、シメパフェをPRするなかで「自分たちでもパフェのお店をやってみよう」と思い立ちオープンしたお店。見た目の美しさはもちろん、アイスやソルベはすべて手づくりにこだわり、お酒との相性も熟慮された新感覚のパフェを提供しています。

塩キャラメルとピスタチオ 〜珈琲とカシス、バタフライピー〜(¥1,150)

いただいたのは人気メニュー「塩キャラメルとピスタチオ」。キャラメルを焦がすところから手づくりの塩キャラメルアイスとピスタチオアイスに、珈琲とカシスのムース、ハーブの一種であるバタフライピーのジュレなどが美しく盛りつけられています。

甘味と塩味のバランスが絶妙な濃厚アイスは、確かにお酒のおともになりそう! 驚くほどなめらかな口あたりですが、これは通常アイスをつくるときに入れる安定剤をできるだけ少なくしているから。そうすることで口どけのいい、さっぱりとしたアイスになるそうです。最後のリンゴジュレも酸味があって後味さっぱり。

現在、札幌パフェ推進委員会の加盟店は26店。商標登録済みの「シメパフェ」という名称を使えるのは加盟店のみですが、それ以外にもこだわりのパフェを出すお店は無数にあると言います。

「もともとは1000円以内が主流でしたが、最近は1500〜2000円と単価が上がってきています。材料を豪華にしたり、産地やブランドにこだわったり、あとは自分好みの組み合わせでオーダーできるお店や、風船を割るとドライアイスが出てくる…といった演出にこだわるお店も増えてきました」

また、地域づくりの一環としてシメパフェに注目する自治体も多いとか。お茶やフルーツが名産の静岡市が姉妹都市として展開する「静岡シメパフェ」をはじめ、いまや全国各地で盛り上がりを見せているようです。パフェ目当ての外国人観光客も増えており、委員会でも旅行会社とともにツアーや商品開発を進めているとのこと。

小林さんが手がける2号店『パフェ、珈琲、酒、佐々木』外観
『パフェ、珈琲、酒、佐々木』内観

シメパフェの定義は、「1日の終わりに食べるパフェ」と小林さん。お酒を飲みたい人も甘いものを食べたい人も、子どものいる家族連れも、同じ空間で今日1日を楽しく締めることができる。そんなシメパフェは、もはや「食べる」ものではなく「体験する」ものと言っていいかもしれません。

「パフェはもともとフランスで生まれたもので、『完全な』という意味のparfait(パルフェ)から来ています。また、パフェに似たサンデーはアメリカ生まれ。日本はアレンジが得意な国ですから、他国で生まれたスイーツが独自の進化を遂げて『日本の食文化』として世界に広まっていく可能性は大いにあると思います」

店名:パフェ、珈琲、酒、佐藤
住所:北海道札幌市中央区南2条西1丁目6-1 第3広和ビル1F
TEL:011-233-3007
営業時間:火~木 18:00~24:00、金 18:00~26:00、土 13:00~26:00、日 13:00~24:00
定休日:月曜(祝日の場合は翌火曜)
Webサイト:http://pf-sato.com

店名:パフェ、珈琲、酒、佐々木
住所:北海道札幌市中央区南2条西1丁目8-2 アスカビルB1F
TEL:011-212-1375
営業時間:18:00~24:00、金・土・祝前日 18:00~26:00
定休日:火曜(祝日の場合は翌水曜)
Webサイト:http://pf-sasaki.com

シメパフェブームの先駆けとなったカフェ

札幌パフェ推進委員会発足のきっかけとなったパフェPRを小林さんに依頼したのは、当時すすきのにあったカフェ『MIRAI.ST cafe & kitchen』。あの『初音ミク』を開発したクリプトン・フューチャー・メディアが運営を手がけていたカフェです。

今年6月に場所を時計台近くに移し、『ミライスト』としてリニューアルオープンした同店。ターコイズブルーがアクセントのおしゃれな店内では、女性はもちろん男性もパフェを楽しみます。もっとも混雑する時間は、カフェではめずらしく21時以降だそう。

「うちはもともと、北海道の標茶(しべちゃ)町で飼育されるブラウンスイス牛のミルクを使ったソフトクリームを提供していました。乳脂肪分の多いミルクのためとても濃厚で、このおいしさをもっと広めたいと思いアリカデザインさんにPRの相談をしたんです。札幌パフェ推進委員会の話が持ち上がってからは、同業同士の横のつながりで一緒にパフェ文化を盛り上げていけたらと思い、いろんなお店に声をかけました」と話すのは、クリプトン・フューチャー・メディアの服部亮太さん。

すすきのでオープンした当初からディナータイム後に来店するお客さんが多く、深夜まで営業していたという同店。シメパフェ文化がすでに根づいていたことがうかがえます。店長の角野みなみさんは、「私も学生時代から『シメスイーツ』をよくしていました。最近は、上司が若い社員を連れて飲みにいく文化が徐々になくなってきましたが、代わりに甘いものをみんなで食べにいくケースが増えてきているようです」と教えてくれました。

2種のオレンジとチョコレートのパフェ(¥1,200)

ジュエリーのようにきらめくこちらは、「2種のオレンジとチョコレートのパフェ」。繊細な飴細工がのったブラッドオレンジのアイスに、マンダリンオレンジが添えられています。その下はチョコチップクリームやナッツ入りブラウニー、ブラウンスイス牛のソフトクリーム、ブラッドオレンジソースなど。食べ進めるごとに味わいも食感も変わり、本日2つ目ながら最後まで飽きずにおいしくいただきました。

『ミライスト』では、スイーツ以外のフードメニューにも力を入れています。「道産じゃがいも3種のベイクドポテト」「エゾシカとポークのソーセージ盛合せ」などの北海道らしいメニューをはじめ、夕食前にちょい飲みするというフランスの文化「アペロ」にちなんだ「アペロセット」「スイーツアペロセット」も人気。

「北海道の食材を使い、札幌の都会感を活かした付加価値をつけることで、6次産業化にも貢献できるのではないか」と服部さん。「特徴をもったお店がどんどん増えているので、切磋琢磨してシメパフェ文化を盛り上げていきたいと思います。当店がある大通〜札幌駅エリアは、大通公園も時計台も近く観光拠点として便利ですが、シメパフェのお店はまだ少ない。パフェを食べてから街に繰り出したり、観光の疲れをパフェで癒したり、当店が旅の拠点となれるように積極的に発信していきたいです」

店長の角野さん(後列中央)とスタッフのみなさん

店名:ミライスト
住所:北海道札幌市中央区北1条西3丁目3番地 敷島北一条ビルB1
TEL:011-251-0390
営業時間:月〜木 11:30~23:00、金・土 11:30~24:00、日 11:30~21:00(2019年10月1日から11:30~17:00)
定休日:不定休
Webサイト:https://miraist.com

Writer
三橋温子
Photographer
千秋広太郎 ※一部提供画像
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